政府税制調査会の石会長は6月23日、相続税は課税範囲拡大の方向で議論を進める可能性を指摘した。
相続税の税収は1兆4000億円程度で国税の約3%程度。税収の手段とはなりにくいことから、石会長は議論の方向性として、「本来あるべき姿としての冨の集中化を阻止することが重要というのが税調の主流(の議論)」だと指摘。「資産段階での再分配機能を強化する視点が優先されるべきだ」と語り、合同会議でも課税範囲の拡大について「強い反対はなかった」と述べた。 (5月24日朝日新聞)
相続税をめぐる方向性は日米で全く正反対となっている。
アメリカにおいて連邦遺産税の税収は2004年で241億ドル(約2.6兆円、$=110ベース)で全体の中では1.2%だ。税収の手段にはなりにくいので、2001年より10年かけて基礎控除額を上げつつ最高税率を下げて、段階的に減少させ、2010年には廃止をする。(下表)アメリカの方が極めてわかりやすい。
年
|
最高税率
|
生涯控除額$
|
2001 |
55% |
675,000 |
2002 |
50% |
1,000,000 |
2003 |
49% |
1,000,000 |
2004 |
48% |
1,500,000 |
2005 |
47% |
1,500,000 |
2006 |
46% |
2,000,000 |
2007 |
45% |
2,000,000 |
2008 |
45% |
2,000,000 |
2009 |
45% |
3,500,000 |
2010 |
0% |
0 |
日本の考え方は税収の手段となりにくいので“富の集中化を阻止する”。言葉を補えば税収の手段にはなりにくいので、富の集中化を阻止するために増税するということになる。
ではどうやって行うのか。相続税の基礎控除額(1000万円×法定相続人の数+5000万円)を引き下げる。バブル期に比べて土地価格が下落しているからだと言う。日本の方がわかりにくい。目的は富の集中化を阻止すると言うのであれば、累進税率にどうして手をつけないのだろう。よほどわかりやすいと思う。
増税なのか、減税なのかの是非については脇におき、日本とアメリカではプロセスの違いの大きさを感じざるを得ない。どうして日本の方が、“お上から”これこれ、このようにすると、上から下への一方的な押し付け?にも思える流れになるのだろう。相続税に対して民意がどのように反映されるのだろうか。下からの議論が国政に反映されるとは思えない。そもそも、相続税についてどうするのが良いのか、普通の人がいろいろ発言することすらない。お上が決めたことに民は文句も言わず従うと言うような封建時代のパターンが今でも影を落としているのだろうか。
相続税に関して言えば、アメリカは国民の直接選挙を行った。即ち、ブッシュの大統領選挙の公約が減税であり、2010年における遺産税が盛り込まれていた。それゆえに、減税路線をとるのではなく、増税路線をとるのが良いと考える人はブッシュに投票しなければ良い。極めてわかりやすいし、民意がダイレクトに反映される。増税・減税の是非についても、有権者の議論になっているし、マスコミの捉え方もはるかに活発だ。アメリカの場合は、向こう10年間の税金の方向を示して動いた。その内容の良し悪しは有権者が判断するところだ。
日本は、はるか手の届かない世界で議論がなされ、結果が降りてくるだけだ。下から上への流れもない。言わないけれども、政治家も国民もみんなわかっている。日本の財政は破綻する方向に突き進んでいる。それゆえに増税は避けようがない。税について語ることは増税の話になるし、それでは選挙で支持してもらえない。できれば税については避けて通りたいのが日本だ。来年の参議院選挙で民意を反映すると言っても、政治と我々の距離感は相当なもので、ダイレクトな感覚は低い。
日本とアメリカは、目的地は同じでも、増税と減税、まったく異なる道を歩む。