日本においては銀行の口座を共有名義で持つことは普通ない。しかしアメリカにおいては共有名義で預金口座を持っていることはごく普通だ。なかなか便利なものであるが、必ずしも万能と言えないこともある。
共有口座は誰が持っていることになるのか。法によればきちんとした証拠がない限り、拠出した比率で、拠出した人のものになっている。母と子供が共有口座を持つとする。その金額すべてが母親の稼いだものから出されている。このケースでは、母親と子供が生きている間はそのお金は母親のものである。子供がお金をおろしたり、自分で小切手を書くと、母親からの贈与もしくは借り入れと言うことになる。
一方で銀行は口座のお金が誰のお金であるかは詮索しない。銀行は当事者のいずれかに支払うことができる。
さて、共有口座の当事者の一方がなくなると、共有口座は生き残っている方のものになるのが通常だ。母親がなくなり、特段の定めがなされていなければ、その口座は共有の子供のものになる。
仮に母親と子供3人の家庭だとする。2人の子供たちはそれぞれ結婚して、どこか遠くの土地で暮らしている。一番下の子供だけが残り母親と暮らしている。母親は高齢になり銀行まで出かけて請求書の支払いをしたりすることが大変になる。
そこで、母親は自分に代わり請求書の処理をしてもらいたいので、一番下の子供と自分の口座の共有名義とする。こうして、その子供は母親に代わり自分で小切手を切ったりして請求書の支払いをする。なかなか便利なものである。
母親にしてみれば、自分に万が一のことがあれば残った子供に3分の1ずつお金を残したい。しかし、そうした意志を書きとどめることなく、亡くなってしまう。一番下の子供は母親の意思はわからず、共有名義になっているので、この口座のお金はすべて私のものと考えてしまうかもしれない。母親の意思が明快に残っていなければ、母親の意思を特定することは難しい。共有名義になっているものは残った共有者のものと想定されることは十分にあることだ。
この逆のケースもあり得る。子供がなくなり母親が残る場合だ。遺産税を処理する場合、お金の出所をきちんと特定して処理するのではなく、共有ゆえにもともと母親と子供が半分ずつ持っているという考え方になることがある。
すると、母親はすべて自分が拠出したにもかかわらず、その半分を受け取ることになる。それに対して遺産税を払わなければいけないという、いかにも不合理なことが発生することも考えられる。
共有口座は便利と思えるかも知れないが、子供と共有にする場合には問題を抱えることになりかねない。